改革の背景にあるのは財政破綻
―――無理な改革でも避けられない―――2004年12月1日
中京大学 大学院教授 経済学博士 水 谷 研 治
小泉内閣の掲げる改革が進まない。
反対に会って形だけの改革になりつつある。道路公団の民営化や国立大学の法人化などがその例である。
国と地方自治体との間の補助金や交付税をめぐる、いわゆる三位一体の改革に対して猛反対が起きている。改革の目玉である郵政の民営化がどのような姿になるのか見当がつかない。
定率減税の停止は実質的な増税であると反対の声が高まっている。景気に頭打ちの兆しがあるだけに、どのような形であっても増税は先送りしようという意見が出てきたからである。
いろいろな改革に無理がありすぎる。拙速に過ぎるきらいがあり、十分に検討して無理のない程度の改革に納めるべきであるとの意見が多い。
ところが無理な改革でも実行せざるを得ない事情がある。国家財政が破綻しているからである。もはや国家公務員に対して賃金が支払えない状況になっているのである。現在、国家が実施している事業を止めてしまうか、あるいは民間に任せる以外に方法がなくなっている。
今のままが良いという意見は、今のままでやっていけるとの誤解から出ている。現在の財政赤字は膨大であり、毎年赤字分だけ国の借金が増えていく。すでに借金の残高は500兆円に近づき、その金利支払だけで国の年間に使うことができる資金を全部当てなければならない事態になりつつある。
今年度の予算で見ると、税収42兆円と税外収入4兆円の合計は46兆円となるものの、地方交付税として地方へ16兆円分けなければならないために、国が実際に使うことができる可処分年収は29兆円に過ぎない。
金利の支払が9兆円となるために、一般歳出に使うことができる資金は20兆円に過ぎない。現実には48兆円使っている。そのために赤字は27兆円と膨大な金額になっている。
極端に低い金利となっている現在ですら金利の負担は重い。将来的に普通の金利水準になると6パーセントにはなろう。借金500兆円の6パーセントとすると金利の支払は30兆円になり、国は全収入を当てても不足することになる。
財政赤字の27兆円を削減することは当然に必要なことである。そのうえ積み上げた借金を返済しなければならない。それらを大至急実施しなければならない。金利上昇との競争である。すなわちインフレになる前に借金を返済しなければならない。
それが我が国において改革を急がなければならない根本的な背景である。何時までも甘い考えで先送りしようとする余裕はなくなっているのである。
改革に伴って経済水準は大きく落ち込む。それを前提として将来計画を立てなければならない。
―――セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2004.12.1)から―――