著者が語る「水谷研治の講義 日本経済」

          中京大学 大学院 教授  経済学博士   

将来の計画に役立ててほしい

   経済の大きな流れが分ると便利である。人々は生活の計画を立てやすい。企業にとっても将来の見通しは重要である。

  ところが将来を予想することは非常に難しいと考えられている。その理由の一つに経済のことは分り難いとの思い込みがあるように思われる。

  経済の情報は毎日、洪水のように流れてくる。それだけに経済のことは誰でもよく知っているはずである。ところが実際には逆である。あまりにも多くの情報が流れてくるために、その整理がつかない。

  山のような情報が全部重要とは考えられない。それぞれの情報は当事者にとっては重要でも、一般的には必ずしも必要でない場合が多い。普通の人々にとって、そのような事柄に注意を向けている余裕はない。また、その必要もないと考えられる。

  何が重要であるかを捕まえることができれば、無駄な神経を使うことはなくなる。それに集中すれば、気が楽になるだけではない。経済の大きな筋道をたどりやすくなる。もちろん情報の波に飲み込まれる恐れはない。

  経済の問題は身近なものであり、本来、難しいものであるはずがない。大部分は常識で判断できるはずである。

  ただし、基本的な経済の見方を知っておくことは必要である。経済における基本的な原則がそれほど多いわけではない。しかも、ほとんどは身近な法則であり、少し考えれば納得できるものばかりである。

  それだけに経済についての基本となる考え方だけは身につけておきたいものである。そして、それを基にして経済の先行きを自分で予測してみていただきたい。大げさに考えず、できるかぎり大筋をたどるようにすることをお勧めする。

自分で手掛けてみると経済の動きがしだいに見えてくる。そうすれば、政府をはじめ、いろいろなところが出している経済の将来予測の特徴が分るであろう。

  経済の動きが予想できると、経済現象についての理解が深まり、ますます興味も湧いてくる。それらがすべて自分の将来設計に役立つ。

  これこそ著者が願っていることである。

―――ダイヤモンド“Kei経”5月号P28への寄稿(2004.5.10)から―――

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