2003.6.10

金融政策に頼っても無理

     ―――お金の力はなくなった―――20030610―――水谷研治

  景気を良くするための方法として金融政策が脚光を浴びている。

  本来は財政政策に期待したいところであるが、それができなくなってしまった。財政政策が長年にわたり利用された結果、我が国の財政が破綻状態になっているからである。

  金融政策による景気振興の方法は金利を引き下げることと、資金を供給することである。

  金利を引き下げると企業が資金を借りて投資するであろう。その結果、景気が良くなると考えられている。資金が供給されれば、その資金を使って人々も企業も買うであろう。需要が高まって景気を刺激すると期待されるわけである。

  そのためには条件が必要である。金利が高くて投資ができないことと、資金が不足していることである。

  このような条件は当然のことと考えられてきた。ところが現状はまったく違っている。金利は極端に低くなっている。短期金利はゼロであり、10年ものの国債金利が0.6%を下回っている。かつて、これほどまでの異常な金利となったことはない。想像を絶する状況となっている。

  これほどの異常な事態となっているのは、異常な金余りの結果である。景気の先行きが思わしくないため、企業としては資金を借りて投資しようとする意欲が出てこない。そのうえ長年にわたり、膨大な資金供給が続いている。そのために金余りが続いているだけではなく、金余りが加速しているのである。

  このような状況の中へ、当局がさらに大量の資金を供給しても何の効果も出るはずがない。それらの資金を利用してものを買うことにつながらないからである。したがって景気を良くすることにはならない。

  それでいて一方、資金余剰がさらにひどくなるために、それに伴う悪影響はさらに大きくなる。

  このような金融政策の方向は間違いである。それにもかかわらず、その施策が続くと考えざるをえない。我々はそれらを前提として考え、対処しなければならない。

―――ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2003.6.1)から―――

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