異常な低金利は続く

               ―――極端な金余りの転換は何年も後―――20030301―――水谷研治

  金利が極端に低くなっている。銀行へ1年間の定期預金をしても、金利は0.03%に過ぎない。金利がほとんどなくなってしまった。長期金利も同様である。10年ものの国債金利が1%を割っている。

  金利がこれほど低くなったことはない。古今東西に経験がない事態となっている。ローマ時代に似たことがあったと言われることがあるが筆者は確かめていない。

  金利は資金に対する需要と供給によって決まってくる。金利がこれほど低くなった理由は、資金の需要が少ないのに対して、資金の供給が極端に多くなっているためである。

  景気が下がり続け、経済が右肩下がりに縮小を続けるかぎり、企業は慎重な投資態度を続けると考えられる。景気の先行きに自信がないと、企業の投資意欲は低迷したままで推移するであろう。投資を考えている企業も、自己資金の範囲でしか投資をしない。したがって今後も資金需要は盛り上がらないであろう。

  一方で資金はとうとうと民間へ流れ込んでいる。

  まず海外から膨大な資金が国内へ入ってくる。輸出の結果である。一方、輸入代金は国内から出て行く。しかし、我が国の経常的な収支は膨大な黒字である。その分だけ資金が国内へ余分に流入する。年間10兆円を超える膨大な資金の流入である。

  国内では、財政の赤字分だけ資金が政府部門から民間部門へと資金が流れ込んでいる。その金額は海外から流入する資金量よりもはるかに大きい。この動きは過去27年間、変わることなく続いている。すなわち毎年、膨大な資金が民間部門へと流入しており、それが累積しているために、民間では極端な余剰資金に溢れているのである。

  そのうえ、昨今は日銀による異常なまでの資金供給が続いている。国債等の買い入れによる民間への資金の供給である。それが巨大な金額となっている。景気を良くする方法として財政政策を使い尽くしているため、金融政策によって少しでも景気の下支えをしようとするかぎり、日銀からの資金供給は続くであろう。

  ただし、それによって景気を刺激する効果は期待できないため、やがては方針が転換されると思われる。それでも、海外からと財政からの資金の流入が続くかぎり、基本的に民間部門における資金の過剰感がなくなることはないであろう。したがって、資金の過剰感はまだまだ続くと考えざるをえない。

  このことは、異常なほどの低金利が基本的には続くことを意味している。それが変わるためには、デフレ経済がインフレ経済へ転換することが必要である。それは5年や10年では起きないであろう。

  その間、資金を運用する人々の苦労が続くわけである。一方では資金を借りている人々にとっては願ってもないことになる。

  しかし、我が国の財政のように膨大な借金がある場合は安閑としているわけにはいかない。金利が本格的に上昇するまでに借金を縮小させておかないと、金利が正常な段階へ戻った際には、金利支払が急増して財政が破綻に追い込まれることになるからである。

―――Tabislandへの寄稿(2003.3.1)から―――

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