崩壊したのはアメリカに対する幻想
―――世界経済への影響は甚大――― 2001年10月18日
自爆テロによって世界貿易センターのビルが崩壊した。かつて、その87階に東海銀行のニューヨーク支店長として勤務していた筆者としては、大変な衝撃である。
ビルと同時に崩壊したのはアメリカに対する幻想である。これまで世界の人々がアメリカを超大国として軍事、外交、経済に比類なく、絶対的に信頼できる国と考えていた。その実態を見直すことになろう。すると、アメリカを中心として回っていた世界の経済が一挙に崩落する可能性が出てくる。
世界中でアメリカほど信頼の置ける国はないと思われてきた。それだからこそ、世界中の人々が資金をアメリカへ貸し続けてきたのである。アメリカは、その資金で世界各国から必要なものを輸入している。
おかげで世界の各国は大量に輸出ができて、資金が手に入る。その資金で大量に輸入をしている。欲しいのは精巧な機械であり、日本製品が買われた。我が国からの輸出が大量に行われた背景となっている。もちろん日本製品の質が良かったためである。それと同時に諸外国が豊かな資金に恵まれていたことが幸いであった。
このようにして世界経済が繁栄を続け、その恩恵に浴したのが我が国である。その原動力になったのはアメリカの大量の貿易赤字である。それを支えたのがアメリカへの資金の流れであり、その背景にアメリカに対する幻想があったと考えられる。
その幻想が続かなくなると、これまでの経済取引は一挙に破綻する。正常化すると言うべきかもしれない。アメリカが従来のように大量に輸入しなくなると、世界の貿易額は縮小する。それにつれて世界の経済は大きく水準を低下させるであろう。その影響を受けて我が国の景気は大幅に下落する。
それが、どの程度になるか、どのような速度で実現してくるかについては明確ではない。アメリカをはじめ、我が国を含めて世界各国の政策当局がどのような対策を採るかによっても違ってくる。
ただ言えることは、これまで長年にわたって先送りしてきた咎めを大きく抱えているだけに、問題をいつまでも先送りすることができなくなっている。今回のテロが宿年の問題解決の大きなきっかけになる可能性がある。その時のことを考えて行動する時期に来たと考えるべきである。 ――――TabisLandへの寄稿(2001.10.1)から

inserted by FC2 system