国際収支の黒字激減は要注意―――深刻な輸出入の状況――― 2001年9月12日..水谷研治
国際収支の黒字が急激に減少している。
我が国は長年にわたって大幅な黒字を続けてきた。そのために、黒字幅の圧縮こそ必要であると考えられてきた。したがって国際関係を考えると、今まで、できなかった黒字の縮小は好ましいと思われているようである。
黒字の縮小が一時的で、僅かであれば、心配はない。ところが昨今の動きは急激であり、黒字の縮小幅も大きい。この傾向が続くとすれば大問題である。
国際収支の基本は輸出と輸入の動きである。輸出が減少してきているいる一方で、輸入が増加を続けている。
国内の景気が思わしくないだけに、海外へ積極的に販売したいと、各企業が輸出に意欲を燃やしているはずである。景気が悪くなると輸出が増えるのが普通である。
ところが昨今は、そのような状況にはなっていない。海外への輸出を増やしたいと考えるのは国内の生産余力があるためである。モノ余りは極端であり、その状況は長く続いている。その意味では、輸出しようとする力は変わっていない。変わったのは海外諸国の買う能力である。
諸外国は経済状況が悪化して、我が国から輸入できなくなってきた。その元は、アメリカ経済の落ち込みである。それが直接我が国の輸出の削減になってきたのは当然である。その前に、東南アジアがアメリカの影響を受けたために、我が国から東南アジア向けの輸出が減少している。
景気が悪くなると、国内の経済活動が落ち込む。そのために、原材料の輸入はもちろんのこと、製品の輸入も減るはずである。ところが、昨今は、景気が悪化しているにもかかわらず、輸入が増え続けている。
海外への依存が強くなっているからである。食糧を含めて輸入に頼らざるを得ない状況に陥っている。国内産業の空洞化は依然として、いや、従来以上の速度で進行している。
このような傾向が続くと国際収支は赤字へ転落するであろう。それでも、しばらくは心配しなくても良いとの意見が続くと思われる。膨大な過去の蓄積を吐き出せば、問題がないように見えるからである。
しかし、国の経済状態を最終的に判断する基準は国際収支であることを忘れてはならない。その結果が出てからでは、遅いことも知っておかなければならない。将来の問題の対策は、今、必要である。それは国内産業の空洞化を阻止することである。---TabisLandへの寄稿から―――

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