2022.1.1
好悪両面を抱える新年の景気
―――長期的課題への挑戦が必要―――
名古屋大学 客員教授 経済学博士 水 谷 研 治
今年は景気が大きく回復することが期待されている。
コロナ対策として2年間にわたり人々の行動が制限された影響は大きかった。人々の生活が元へ戻るだけで急回復になるはずである。消費を控えていただけに人々の懐には余裕資金があると考えられる。それがさらに消費景気を盛り上げることが期待されている。
昨年の衆議院に続いて今年は参議院の選挙がある。各党ともに国民の支持を得るために必死である。選挙民を引き付けるためには、人びとを幸せにすることを主張しなければならない。各種の補助金・援助金を約束し、賃金を上げ、雇用を増やす政策が織り込まれる。大量の財源が必要になるが、そのための増税は政治家にとっては禁句である。逆に政党によっては減税が主張される。
選挙が終わると当然に選挙公約の履行が求められる。わが国では不足する資金を国債の発行で調達することができる。赤字国債を増発して資金を作り大盤振る舞いが行われると思われる。それが本年の景気を盛り上げるはずである。
しかし一方では大きな問題が控えている。米中の対立をはじめとして世界の情勢は悪化している。わが国にとって輸出入の最大の相手国である米中であるだけに影響が大きい。同様に影響を受けている東アジア諸国もわが国にとって重要な先である。コロナ禍の影響もあり各国の経済活動が支障をきたしている。長年にわたって確立してきた国際分業の体制が狂ってきた。その影響は「モノ不足」として経済活動に影響を及ぼしている。
さらに大きいのはコロナ禍の後遺症である。各国とも国家財政を犠牲にして対処しているため、放置できない国が大部分である。赤字財政の解決しようとすると景気の悪化が避けられない。全世界の経済を冷え込ませるであろう。
わが国の財政赤字は世界中で飛び抜けて大きくなっている。これを何時までも放置しているわけにはいかない。財政再建が遅れれば遅れるほど後の世代に深刻な禍根を残すことになるからである。大きな課題を抱えての新年である。
---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2022.1.1)から---